鉱山ブログ

おそらく日本最後の現役「立坑ケージ」復活なるか?【その3】
2018年4月23日 | カテゴリー: 鉱山記事

立坑ケージのお話の続きです。


立坑ケージそのものの説明は、【その1】をご覧ください。
立坑ケージの仕組みと動作については、【その2】をご覧ください。

 

今回は、弊社の立坑ケージで発生した故障について書いていきます。

昨年11月に、立坑に設置してある排水管に穴が空いて、地下からくみ上げている坑排水が漏れ始めました。坑排水は坑道を掘る際に出てくる湧き水ですが、pHが3〜4程度の強酸性のため、そのまま流すと公害になります。そこで、ポンプを使って地上にくみ上げて、中和処理を行ったのちに河川に放出しています。

 

そんな強酸性の水ですから、一旦吹き出すと、まわりにある鉄製品を一気に劣化させてしまいます。今回はたまたま運が悪く、立坑ケージの重りを吊ってあるワイヤーに坑排水が集中的にかかってしまい、ワイヤーの劣化、弱体化が一気に進んでしまったようです。

 

さて地上では、そうとは知らず、排水管の修理を行うために、作業員が立坑ケージに機材を積んで、穴の空いた排水管の位置まで下ろそうとしていました。そこで、数年ぶりに立坑ケージの試運転を行ったところ、ワイヤーが切れて、重りが地下まで落ちてしまい、ケージを動かすことができなくなってしまったのです。

イメージとしては、こんな感じです。

 

 

立坑の真下のある地下坑道には、落っこちてしまった重りと、落下したワイヤーが散乱している状態です。このワイヤー、大変重いんですよ。

 

重りを吊っていたワイヤーが切れて、地下坑道に落下した状態

 

立坑ケージが壊れてしまい途方にくれたものの、排水管の修理はしなければならないので、道具や機材は隣にある非常階段を使って、えっちらほっちらと人力で運び入れて、なんとか修理は完了しました。

 

しかし、立坑ケージの修理はさすがに自分たちではできません。
ワイヤーの交換には、専門の職人さんの技が必要です。
まずは、今から40年以上前に、弊社に立坑ケージを設置してくれた大手工営会社に連絡することにしました。といっても、その会社はすでになく、同じグループ会社にある別会社に鉱山プラント事業を移管していたので、そちらに連絡を取ってみました。

 

40年も前のことだし、さすがにやってくれないかも…と不安に思っていました。
実際、数日後に来たプラント会社の方は、「立坑ケージの修理ができる職人がもういないんだよねぇ」とおっしゃっていて、ちょっともう無理な感じが漂い始めました。

 

その後も、何度かやり取りや現地調査をやっていただき、とりあえず、現況調査と工事のお見積りを作成していただきました。とにかく、古い設備なので調べながら、ちょっとずつ進めていただけるとのことです。

 

まずは何よりも、こんな古い設備の修理に取り組んでいただけることに大変感謝です。
弊社の実情からいうと、鉱石や人員の運搬にはトラックを使っているため、立坑ケージはすでに過去の設備といえます。しかし、なくなってしまうと、坑道のメンテナンスに支障が出る可能性があると判断し、なんとか時間をかけて修理していくつもりです。

 

それに立坑というのは、やはり鉱山のシンボルですから、とても小さな立坑ですが、維持する体力がある限り、なんとか稼動する状態で残していきたいと思っています。こんな小型の立坑で、今でも現役で残っているなんて、日本ではおそらく弊社のみでしょう。

 

せっかく21世紀まで生き残った立坑ですから、せめて自分が鉱山にいる間は残してやりたいところです。