先月(9月)20〜22日に九州大学で開催された「日本鉱物科学会」にて、長崎県窯業技術センターの武内さんをはじめとする研究グループが、弊社の土橋陶石を精製した「土橋セリサイト」に関して研究発表を行いました。
ポスター発表の内容をこちらに掲載いたします。

 

PDFはこちらからご覧ください。

 

なお、同研究グループでは、昨年も日本粘土学会の研究会にて、土橋セリサイトの研究成果を発表しています。詳細はこちらをご覧ください。

 

日本粘土学会の研究発表で「土橋セリサイト」をご紹介いただきました


土橋セリサイトは可塑性に富んだ陶磁器原料でありながら、標準的なセリサイト原料に比べるとカリウム(K2O)の含有量が少ないことがわかったため、その原因を探る、というのが今回の研究発表です。

残念ながら、今回の研究では、カリウムが少ない原因が特定できませんでしたが、セリサイト以外にも20-100nmサイズの粒状物質が存在することが確認できました。つまり、何らかのナノマテリアルが存在するかもしれない、とのことです。

今後も研究成果が出ましたら、こちらのブログでお知らせしていきます。

10月19日(土)、20日(日)の2日間、弊社の近くにある旧閑谷学校にて、「セラミックアートビゼン in 閑谷」が開催されます。この2日間は、「備前焼まつり」も開かれています。両会場を結ぶシャトルバスも出るそうなので、どちらも楽しむことができる2日間です。

弊社は土曜は営業日なので、20日の日曜に会場を訪問する予定です。「セラミックアートビゼン」のオーガナイザーを務められている石田和也さんは、土橋陶石を精製した「土橋セリサイト」を使った作品も作っていらっしゃるので、ひょっとしたら備前焼とコラボしたユニークな作品が見られるかもしれません。とても楽しみです。

イベントの概要は以下のチラシのとおりです。



備前焼まつりのほうは、備前市が年1度だけ観光客でごった返す大きなイベントです。そのために、駐車場の確保が難しいという問題があります。ですので、まずは閑谷学校の「セラミックアートビゼン」を楽しんでから、シャトルバスに乗って、備前焼まつりのほうも楽しもうと考えています。おそらく閑谷学校のほうが駐車スペースが確保しやすいはず。

弊社の土橋セリサイトは、真っ白な陶磁器を作るのに便利な原料ですので、本来であれば備前焼の坏土とは対極的性質です。備前焼とのコラボがいったいどんなふうになるのかとても気になります。実はこの1年ほど、石田さんだけでなく、他の備前焼作家さんにも土橋セリサイトを取り扱っていただいてまして、みなさん色々と試行錯誤をされているようです。素敵な作品ができたら、ぜひとも弊社の玄関に飾りたいと思います。

前回「精製セリサイトを弊社でも独自に生産しよう」という記事を書きました。
実際のところ、弊社には精製セリサイトを作るための水簸(すいひ)の施設がありません。そこで、水簸を行う粘土会社さんに依頼して、弊社の陶石を使った精製セリサイトの試作を行いました。

試作品の見た目はこんな感じです。

 


フィルタープレスから取り出した状態です。

試作品の成分分析を行ったところ、以下のような結果でした。

 

成分 分析結果(%)
SiO2 72.96
Al2O3 19.07
Fe2O3 0.25
CaO 0.12
MgO 0.05
K2O 4.44
Na2O 0.14
TiO2 0.09
Ig-loss 2.88


セリサイトの含有量を示すK2Oの値が4.4%ちょっと低いです。
これだと、セリサイトの含有量はおよそ30〜40%といったところでしょうか。シリカ分が50%以上ですね。できれば、セリサイトが50〜60%程度まで上げたいところでした。

今回利用した弊社の原料が、もともとセリサイト分の少ないものだったので、もう少しセリサイト分の多い原料を使えば、もっと含有量が上がると思います。

 

粒度分布は以下の通りです。

粘土会社さんが窯業試験場で試験依頼してくれました。

 

今回の試作でいくつか課題が出てきました。

まず1つ目の課題は、思ったよりも精製品の出来高が少なかったことです。
今回は2トンの原鉱を元に1トンの精製セリサイトを作る予定でしたが、実際に出来上がったのは0.85トンとちょっと少ない結果でした。一方で、精製の過程で発生する「砂」と呼ばれる残留物が1トン近く残ってしまいました。この残留物にもまだセリサイトが含まれています。

 

 

精製後の「残りカス」となる「砂」。実際はこの中にもまだセリサイトが含まれている。


この課題に対しては、粉砕時間を長くして、「砂」からさらにセリサイトを取り出す必要があります。そうすれば、精製品が増えて「砂」が減るはずです。しかし、粉砕を長くすると、セリサイトの結晶が壊れてしまい、粒子がどんどん小さくなります。また原鉱に含まれる珪石分がより多く残ってしまい、精製セリサイトの品質を落とす可能性もあります。

 

2つ目の課題は、K2Oの濃度です。
可能であれば、5.5〜6%程度のK2Oが含まれるような精製品を作りたいと思っています。K2Oが多い=セリサイトの含有量が増えるため、保水性などが向上すると考えています。

 

上記2つの課題に対しては、セリサイトの含有量が多い、より良質な原鉱を使うことも必要かと思います。何回か試作を重ねてみて、最適な生産工程を編み出したいと思います。

 

ちなみに、今回の試作した精製セリサイトですが、「使ってみたい」という陶芸家の方や陶磁器メーカーの方がいらしたらお知らせください。まずは1キロ分、無料サンプルとしてお送りいたします。

あくまで試作品ですので、使ってみた際のご感想やご要望を伺いながら、今後の試作に活かしていきたいと思います。

 

写真の左が原料となる陶石、右が精製セリサイトの完成品イメージ。

水分を20~30%含む粘土です。

 

弊社の陶石は、陶磁器の原料として利用されていますが、その際に「水簸(すいひ)」という工程を行い、その他の陶磁器原料に添加するための「精製セリサイト」となります。

 

陶磁器やボーンチャイナ、英語でいうところの「Porcelain(ポーセリン)」を作る際は、カオリンと呼ばれる陶石、動物の骨を焼いた骨灰(リン酸カルシウム)、その他、珪石や長石、蛙目(がえろめ)粘土などを用途に応じた比率で配合して、ボディとなる粘土(杯土と呼びます)を作ります。

 

ここに「精製セリサイト」を添加することで、杯土の可塑性を上げることができます。可塑性というのは、例えば杯土をこねてお椀の作った際に、可塑性のない杯土だと、へたっとへたり込んで、お椀の形を保つことができませんが、可塑性があればお椀の形をずっと保つことができることをいいます。つまり、ある一定の力を加えると変形するが、変形した後、力を加えなければ、ずっとその変形した状態を保ち続けることです。

 

「精製セリサイト」を加えるメリットは、他にもあります。セリサイトはカリウム(K2O)やアルミナ(Al2O3)といった物質が比較的多く含まれていながらも、焼成した際の収縮が小さいという特徴があります。そのため、磁器などを窯で焼いた際、どの程度まで小さくなるかメドが立てやすいといえます。

 

もう1つのメリットは、鉄分が大変少ないことです。蛙目粘土などは鉄分(Fe2O3)を多く含むことから、窯で焼いた後の色合いにも大きく影響します。一方、精製セリサイトの鉄分は、Fe2O3換算で0.2%前後と大変少ないです。素地の状態でより白いものを作りたい場合、精製セリサイトは好都合といえます。

 

そんな精製セリサイトを、弊社でも独自に生産してみようと考えています。すでに、弊社の原料を使って精製セリサイトを作っている原料メーカー様もおられるので、今回はそうした原料メーカー様がやってない製造法を用いて、小ロットで生産し、陶芸作家様向けに提供したいと思っております。

 

ちょっと長くなりそうなので、続きは次回に書きますね。

5月末より製造を開始しますので、ご興味のある方はお問い合わせください。

ご報告が遅くなってしまいましたが、4月3日の山陽新聞朝刊、地方経済面にある連載コーナー「探訪 ザ・カンパニー」に弊社の紹介記事が掲載されました。今度は、会社の成り立ちや経営状況などが簡潔にまとめられています。

 

先月掲載された立坑の記事を取材していただいた記者さんが「せっかくだから、こちらのコーナーでもご紹介しますよ」とのことで、とても丁寧に取材していただき、私の方も思わず、いろいろ話しすぎてしまった感じです。弊社の今置かれている状況を、ある意味包み隠すことなくお伝えする内容となっています。

 

このところ、毎月のようにメディアにご紹介いただき、大変ありがたいですが、もうこれでしばらくはないと思います。飲食店や一般家庭向けの商品を作っている会社でしたら、メディア露出によって売り上げが伸びたりするみたいですが、弊社のような天然資源では、残念ながらそういった引き合いはないみたいです。

 

とはいえメディア、特に地元の新聞に紹介していただくのはとてもうれしいことです。まずは地元岡山での知名度を上げていって、昭和、平成そして令和と生き延びる鉱山としてアピールしていきたいと思います。

今年2月から3月にかけて、テレビや新聞で弊社のことをご紹介いただく機会がありましたのでご報告です。

 

テレビ東京系列(岡山県ではテレビせとうち)で放送されている「和風総本家」という番組で、弊社鉱山が紹介されました。放送日は2月21日(木)でした。

番組のテーマは「なぜこんなところに職人さん」というもので、弊社のようなちょっと変わったところで働いている人を紹介するという形でした。

 

弊社鉱山は地下155mの地底に坑道を掘り進めています。今回は、岩盤を打ち砕くための発破作業を撮影していただきました。

 

普段は目視が不可能な発破の様子も撮影しています。ちょうどタイミングよく、発破の様子が見られる位置でした。

 

弊社から採掘される陶石は、映像のような食器、陶磁器のほか、衛生陶器と呼ばれる便器や洗面台などにも使われています。

まさか、岡山県のこんな田舎の山中で、こうした陶磁器原料が採掘されているなんて、みなさんご存知なかったかと思います。ちなみに備前焼とはまったく別の原料です。

岡山県には白磁などの陶磁器を作っていたという史実は特にありませんので(備前焼などの須恵器は長い歴史があります)、弊社の原料が陶磁器に向いていることがわかったのはおそらく戦後で、それほど歴史は長くありません。陶芸家でもご存知の方は少ないと思います。

陶磁器の新しい原料元として、全国のみなさんに知っていただけたら幸いです。

 

もう1件、地元の山陽新聞にもご紹介いただきました。

3月6日(水)の朝刊で地方経済面です。

弊社では、昨年「立坑ケージ」と呼ばれる鉱山独特の作業機械を修理しました。修理にはかなりの金額がかかるため、正直なところ、直すべきか、別の近代的な設備に置き換えるべきか悩みました。しかし、現役鉱山で稼働している立坑ケージはおそらく弊社にしか残っていないだろうと思い、鉱山事業の歴史を残す意味も込めて、修理を実施しました。

とても細かく丁寧に聞き取り取材をしていただき、ついつい話しすぎたような気がします(笑)私の思い入れたっぷりな感じが伝わる記事になったと思います。

 

いろいろな形でご紹介いただき、とてもありたがいと思います。今後もいろいろなところでアピールを続けて、地元の方や鉱山・地質などに興味のある方をなるべく見学していただけるように体制を整えていきたいと思います。

上空からの弊社の写真です。

 

あるイベントで弊社と弊社周辺のドローン映像を流したいとのご依頼があり、ドローンを使った撮影に立ち会いました。

見通しの良い火薬庫付近から飛び立つドローン。

 

東方向から粉砕場を撮影。実際は動画ですが、今回はそこから画像を切り出して掲載しています。

 

今度は弊社を離れて、三石の町のほうを撮影。大平鉱山の露天採掘の様子がよくわかります。露天の山の左にある施設群が大平さんの社屋と工場です。JR山陽本線も見えてますね。

 

今度は低空飛行で弊社の坑口を撮影。トラックが地下から上がってきています。もの珍しいドローンをみんなでニヤニヤ見ている様子です。

 

今回撮影していただいた映像は、地元のNPO団体「地球年代学ネットワーク(JGnet)」と備前県民局が開催するイベント「ジオの報告会」にて放映される予定です。

 

JGnetは、昨年6月に弊社に「ジオ見学ツアー」でお越しになり、公募で集まった50名の参加者に弊社鉱山をご覧いただきました。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

 

弊社の見学はツアーの一部ですが、JGnetでは、他にも吉井川のジオに関するイベントやツアーを行っています。「ジオの報告会」はそうした活動の一環です。

 

イベント概要は、以下の通りです。

 

 

こちらのイベント、私も第二部のコメンテーターとして参加します。ヤマは掘ってますが、正直なところ、地質学や鉱床の成り立ちについては全くの素人で、あまりよくわかっていません。鉱山会社の立場から、ジオツーリズムに期待することや、会社としてジオツーリズムにどういった貢献ができるかなどお伝えできればと思います。

立坑ケージのお話の続き、ついに完結編です。
なんと修理が完了しました!

 

立坑ケージそのものの説明は、【その1】をご覧ください。
立坑ケージの仕組みと動作については、【その2】をご覧ください。
立坑ケージで発生した故障については、【その3】をご覧ください。


修理は今年の6月と11月、おおむね2回に分けて進められました。
作業としては、試運転中に切れてしまったワイヤー、その先に吊るされていた重りを地下113mから回収して修理。また、切れたワイヤーの交換と、これと合せて、ケージ(カゴ)側のワイヤーも交換。といった流れで行われました。

 

こちらが立坑の外観図です。
昨年11月に重り側のワイヤーが切れてしまい、重りが地下に落下してしまいました。

 

こちらが内部構造を示す図です。

今回は重りの回収と、重りとケージのワイヤー両方を交換します。

 

地下の立坑乗り場に落下した重り。

 

今年6月、重りの回収と重り側のワイヤー抜き取りが行われました。

 

ワイヤーを抜き取る様子、すごく重い。

 

巻室のドラムからもワイヤーを抜くための切断作業


そして11月、今度は新品のワイヤーに付け替えるとともに、回収した重りを再びワイヤーで吊るす作業に行いました。

 

新しいワイヤーを入れている様子。

 

オーバーホールされた重り、再び地下へ。


断続的な工事を経て、1年ぶりに立坑が復活しました。
でも、まだまだ修理が必要です。ケージが老朽化しており、新たに作り直す必要があります。それに、ケージを左右で支えているレールも劣化がひとく、補修工事をしてやらないといけません。

 

かつては毎日利用して、人員の運搬にも活躍した立坑ですが、現在は年に1回使うかどうか、それに保安上、人員は乗せられないので、道具や機械の上げ下げにしか使ってない立坑なのですが、もうここまで来たら、産業遺産の保存事業です。
これから数年かけて修繕を行い、あと30年は使える状態で残したいと思います。

 

鉱山に残る現役の立坑です。
弊社にお越しの際はぜひとも見学してやってください!

写真は、スタンプミルを使って土橋陶石を粉砕して精製した「土橋セリサイト」のサンプルです。陶磁器原料として有名な「村上セリサイト」と同等以上の可塑性に富んでいるとのこと。

ご関心のある方、このサンプルをお送りしますよ!


去る9月10日、11日の2日間、早稲田大学にて日本粘土学会が主催する「平成30年度 第62回粘土科学討論会」にて、弊社の陶石を精製した「土橋セリサイト」についてご紹介いただきました。

 

こちらは学会で展示発表された際のポスターです。
詳細はPDFからご覧ください。

 

土橋セリサイトの調査・研究を進めているのは、長崎県窯業技術センターの武内浩一さんのグループです。岡山県の弊社鉱山と長崎県の窯業試験場という不思議なコラボですが、ご縁ができたのは、数年前に開催された日本セラミックス協会・陶磁器部会の講演会にて、私が弊社鉱山についてお話ししたことがきっかけでした。

 

弊社の陶石は、東海地方の瀬戸・東濃地区にて陶磁器原料として広く利用されています。瀬戸・東濃は日本最大の陶磁器の生産地ですが、それに次ぐ規模で、日本で最も古い歴史を持っているのが、佐賀県・有田町や長崎県・波佐見町などがある肥前地区です。そのため、肥前地区でも窯業に関する研究が盛んで、弊社の陶石についても関心をお寄せいただいた次第です。

 

肥前地区の陶磁器については当ブログで以前に詳しく紹介しましたので、そちらもご覧ください。

 

ちなみに、有田・波佐見などの肥前地区では、弊社の陶石は使われていません。(私の知っている範囲なので、ひょっとしたら使っている窯元はあるかも…)。肥前地区で使われているのは、陶磁器原料でも最もよく知られている「天草陶石」です。

 

天草陶石は、熊本県の天草諸島で採掘されている陶石で、陶磁器原料として最適な特性を持っており、江戸時代より肥前地区を始め、瀬戸・東濃地区でも使われています。天草陶石は、弊社・土橋陶石とよく似ているところがありますが、天草陶石のほうが圧倒的に有名で、愛用している陶芸家も多いようです。

 

今回の発表では、天草陶石を水簸分級・精製する手法を使って、土橋陶石を精製した「土橋セリサイト」を試作し、水簸した微粒子の比表面積やセリサイト自体の可塑性について検証しています。

 

スタンプミルと水簸分級による精製工程図。

 

肥前地区のスタンプ粉砕の流れです。他地区での水簸との大きな違いは、原鉱を長時間にわたったスタンプ粉砕するところ。これにより、陶石の原鉱を「砕く」というより「剥いでいく」ことで、比表面積の大きな微粒子がより多くできると考えられます。


比較対象となるのは「村上セリサイト」です。村上セリサイトは、新潟県村上市でかつて産出していた村上粘土を精製したもので、こちらも陶磁器業界で超ブランドだった陶磁器原料です。村上粘土は原料枯渇ですでに供給はストップしていますが、今でも保管していた在庫を大事に使っている窯元があるようです。

 

詳細な研究内容は、PDFの論文をご覧ください。

 

結論を簡潔にまとめますと、土橋セリサイトは、ある一定以下の粒径で比べたところ、比表面積は村上セリサイトに比べても大きく、セリサイトとしては極めて大きいことがわかりました。また可塑性の面では、村上セリサイトと同等あるいはそれ以上に富んでいることが判明しました。

 

各種陶磁器用の可塑性原料との可塑性を比較した特性図。

 

以上のことから、土橋セリサイトは陶磁器原料としてのユニークな特性を持っているだけでなく、上記の様な特性を活かした新素材などへの応用にも使えるのではないか、というのが、大まかな結論となります。

 

細かいことはさておき、いま私の手元には、研究グループの武内さんから預かった土橋セリサイトのサンプルが20kg前後ございますので、ご興味のある粘土屋さんやその他メーカーさんにご提供いたします。弊社までお気軽にご連絡ください!

 

なお、土橋陶石を水簸したセリサイトはすでに市販されていますが、そちらとは使っている原鉱や粉砕方法が異なるため、同じセリサイトでも特性が違っている可能性があります。ですから、すでに弊社のセリサイトをご利用の方も、よろしかったらお試しください。

ヤマモトロックマシン社の外観です。

 

鉱山では様々な重機が稼働していますが、その中でも最も重要な機械の1つが「削岩機(さくがんき)」です。削岩機は、硬い岩盤に穴を開けるために使います。弊社の場合、切羽(採掘場の先端)に対して、だいたい40〜50箇所の穴を開けます。

 

1つの穴の長さというか深さは、だいたい1.7〜1.8mくらい。この穴に火薬を詰め込み発破することで、鉱石を掘り出しています。

 

弊社坑内での削岩の様子。削岩機がヤマモトロックマシン社製。
ものすごい音がします。作業者は耳栓をして作業しています。

 

さて、そんな削岩機の老舗メーカーとして、長年の実績を持っているのが「ヤマモトロックマシン」さんです。先日、会社見学の機会をいただき、戦前から稼働している工場を拝見させていただきました。今回はその見学レポートです。

 

ヤマモトロックマシン社(元々は山本鉄工所)の創業は1915年(大正4年)、広島県庄原市の東城町という小さな町で100年以上にわたって削岩機を作っています。現在は、削岩機だけでなく、鉱山や砕石、土木で使われる削岩機や破砕機、それに製鉄所などに使われる各種機械を製造しています。

 

弊社では3台の削岩機が地下坑内で稼働中です。削岩機は「ドリルジャンボ」と呼ばれることもあり、弊社では「ジャンボ」と呼んでいます。

 

ちなみに、今回、会社を訪問した初めて知ったのですが、製鉄所でもやはり「穴を開ける」という工程がとても重要な作業の1つとなっているそうです。高炉の中で煮えたぎる銑鉄を抜き出す際(出銑)に、高炉に穴を開けて、その穴から流し出すそうです。銑鉄の温度は1800℃にも達しますが、この高炉に穴を開ける機械が「出銑口油圧開孔機」です。こちらもヤマモトロックマシン社で生産しており、全国の製鉄所で稼働しています。

 


話を戻して、工場見学です。まず見学したのは、昭和初期に建てられ現在も現役で稼働している削岩機工場です。外見がまさに絵に描いたような昔の工場!

 

なかなかモダンな佇まいですが、教会などのデザインもモチーフになっているようです。

 


内部は圧巻です。ご覧の通り、木造トラスの屋根が目を引きます。
工場内は、真ん中の通路を隔てて、右にも左にも旋盤や工具類が並んでいます。足元には、加工前の鋼材もたくさん並んでいます。戦前の工場のイメージそのままです。

 

こちらの建屋は国の登録有形文化財に指定されています。お話によると「文化財」なら外見を維持すれば中身は変えてもOKらしく、「重要文化財」になると外見も中身の古いまま維持しないといけないらしいです。

 

何だか「昭和っぽい」とか「戦前の工場」なんていってますが、工場内には先進的なNC旋盤もあちこちに見られます。なんとなく古いだけで作業工程は現代風です。訪問日はたまたま曇り空で工場内はそれほど暑くなかったですが、いつもは蒸せ返る暑さだそうです。これだけ機械があれば暑いですよね。

 

いくつか写真をご覧いただきましょう。

 


ほとんどが丸形の鋼材で、大量に保管されています。
地面には軌道の跡があります。昔はトロッコを使って部材を運んでいたそうです。

 


一度に様々な工程が一気にできてしまう旋盤です。

 


とてもきれいに整理整頓されています。
こちらに限らず、どの現場も整理が行き届いており、作業しやすい雰囲気でした。見習わないとなあ。

 

「浸炭工場」と呼ばれる建屋です。
旋盤や工具が並ぶ工場内で、ここだけは雰囲気が違います。
加工した部品の表面にカーボンコーティングを施すため、部品と炭を炉の中で高温で焼く施設です。さすがに暑いです。この工場内には神棚があって、出雲大社の神様であるスサノオが祀ってあるそうです。そういえば、この辺りは中国山地を越えたら出雲となります。

 

浸炭工場から出した部品を冷やす工程です。こちらでは焼いた部品を冷やす作業をされていました。これは熱い!

 

こちらは最新型の小型削岩機です。本日のもう1つの目的は、こちらの削岩機を見るコトでした。削岩機の肝となるのは重機の先端部分であり、車体自体は一般的なパワーショベルと同じものです。

 


新しい削岩機の切れ味を実演していただきました。切れ味は抜群です。


ちなみに、重機の改造や削岩機の備え付けを行っているのは重機工場です。レトロな工場のある場所は東城町の街のど真ん中ですが、重機工場は少し離れた工業団地にあります。

 

ひととおり、ヤマモトロックマシン社を見学させていただきました。
旋盤や金属加工について詳しければ、もっとより深い見所がわかったはず。とはいえ、何も知らない素人が見ても、ただただ感心のため息が出る見学でした。

 

広島の山深い小さな町で、世界の現場で活躍しているスゴモノが作られていることに、ちょっと不思議な感動がありました。来年あたり余裕ができれば、新しい削岩機を導入したいところです。
いやー頑張らないとなあ。